映画『累 -かさね-』感想
映画『累-かさね-』を観てきました。
土屋太鳳さんと芳根京子さん。
お二人ともとてもお顔が整った女優さんですが、この作品に出演されるにあたってどんな演技をされるのか、気になったので観てきました。
＊以下あらすじ＊
美しさと演技力を兼ね備えた亡き大女優「淵 透世」。その実の娘の「淵 累(かさね)」(芳根京子)は、口から右頬にかけて大きな傷があり、その顔の醜さも起因して今はニートのような状態で、実家の親族たちからも疎まれている。
若手女優・「丹沢 ニナ」(土屋太鳳)は、容姿が抜群に美しく、所属事務所も彼女をプッシュしている。しかし、肝心の演技が素人並みに下手、さらには公にはしていないが、突然意識を失い長期間眠ってしまう持病があるため、常に爆弾を抱えながら仕事をしている状態。
そこで、事務所のマネージャーは、「淵 累(かさね)」に目をつけ、累に「女優・丹沢ニナ」の替え玉計画を持ちかける。ここで登場するアイテムが「謎の口紅」だ。
普通は実行不可能な、長期替え玉計画を実現に導くアイテム「謎の口紅」。
累が母・淵 透世から、生前に受け取ったもので、その口紅を塗ってキスをすると、キスした相手の顔と自分の顔が12時間入れ替わるというもの。
この口紅を使って、ニナの顔を借り、舞台の稽古に没頭していく累。
絶世の美女でありながら、影がある累の内面が演技に深みを持たせ、「女優・丹沢ニナ」は演技ができる美人女優として評価され、次々と仕事が舞い込んでくる。
最初は”ニナの顔を借りている替え玉だ”という意識で、ニナに遠慮していた累だが、次第に「女優・丹沢ニナ」は自分であるという意識に変化していく。
累にないものを全て持っている丹沢ニナ(土屋太鳳さん)に刺激されて、さらに肥大化した劣等感と女優として「私のほうが上」というプライドは、累に人としての一線を越え、丹沢ニナの人生をのっとる決心をさせます。
一方、最初は累の演技力を利用しているつもりだったニナ。
女優「丹沢 ニナ」の顔の持ち主である自分が「本物」であることは揺らがないと思っていたのに、
病気で意識を失っている間に、偽物のはずの累が自分の顔を使ってスターの階段を駆け上がり、顔が変わってしまった後の自分(累の顔のニナ)には、家族でさえも気づかないことに戦慄し、自分の人生が乗っ取られていると気づく。
そこへ、「女優・丹沢ニナ」にサロメの大役が舞い込む。
＊＊感想＊＊
芳根京子さんは、元々持っている"女優"としての苛烈なまでの自我と、すくすくと育ってしまった劣等感が瞳の底に棲みつき、体中劣等感に支配され、黒いオーラをまとってているような累を好演されていました。
土屋太鳳さんは、サロメ役の舞踏シーンが、舞踊学専攻ご出身の技術や、舞踊のために鍛えられた柔軟な筋肉がめっちゃ発揮されていて息を飲ませます。また、美しい端正な顔で舞台の照明に照らされた微笑みは、その美しさから狂気があふれます。
太鳳さんが、演技力のある累がニナの顔で演技するシーンを担っていますので、「ニナの顔で演技する累」が水を得たように演技力を発現するところが少しギャップやいびつさの表現が弱かったように感じます。
ニナの顔で影がある演技ができるというのが「女優・丹沢ニナ」の大きな魅力ですが、土屋太鳳さんの圧倒的な輝きが…あと誰もが魅せられる演技というと少し物足りないかもしれません。好みの問題もありますが…また、太鳳さんの容姿は健康体そのものなので、病気を患っているようには見えません。一方で、「いつものニナ」のヒールっぽい演技はハマっていて、そちらには、太鳳さんの女優としてのプライドを感じました。
また赤い口紅を引いて土屋太鳳さんと芳根京子さんがキスし、顔が入れ替わるシーンはこの映画の大きな見どころです。美しさと狂気がいいです。
また女性のいわゆる「表の顔」と、家に帰ってからの「裏の顔」もみられます(笑)
若いお2人の演技バトルがじっくり堪能できるおすすめ映画です。
